そんなことを言われても

管制から離陸許可が下りた

「〇〇、芦屋タワー。クリアード フォー テイクオフ

テイルウインド フロムライト ユースコーション」

(cleared for take off use caution)

 えっ 追い風?

 

その日はソロフライト、しかも追い風で離陸したことは一度もない

正直に言って追い風で離陸することを想定して訓練をしたことも一度もない

どれだけ不安であっても行かなければいけない

殆どの人が知らないと思うが滑走路脇に目印が置いてある

その目印はそれぞれのポイントで離陸に必要な速度が出ているかどうかを判定するためのものである

 

知識としてはあったがその速度を調べたことは無いし、具体的に数字を教えてもらったことも無い

もちろん悪いのは自分自身である

どんな理由があろうと結果を受け止めるのは自分以外いない

教えてくれないからと原因を他に求めても、不足があって事故にあい死ぬのは自分

空の世界では言い訳は通らない

 

思い起こせばかなり緊張していたと思う

いつものように滑走を始めるがなかなか速度が上がってこない

ポイントが目に入るが必要な速度は知らないので何の役にも立たない

 

ジリジリとはこのことだ

 我慢がまん、管制が離陸を許可したのだから必ず離陸できる

そう信じて我慢するがジリジリと迫ってくる海に恐怖を感じた

 

ふわり

肩の力が抜けるのを感じた

 

元をただすと完璧に準備をしなかった自分のおかげで、こんな目にあったのである

天候が不安定なのだから追い風で離陸する状況を想定して準備をしなかった自分が悪い

 俺の時は追い風にはならないはず

という希望的観測しかできない自分のせいだ

 

テール ウインド フロム ライト

そんなことを言われても