マイナスG

私の担当教官は非常に厳しい指導をする方だった

それは指導に熱心であるこの裏返しであり、私たち学生を何とか一人前にしようという思いがある

そういう事がわかっていても厳しいのは嫌なものである

優しい教官もいるなか何故こんなに厳しい教官に当たったのかと思ったりもした

しかし人間とは不思議なものであるどんなに厳しい指導ににも次第に慣れてくるものだ、激しい叱責にもさほど次第に慣れつつあった頃

 

訓練空域での訓練を終え基地に帰る途中教官の叱責を何と悪聞いていた(っと教官が受け取ったのだろう)ときいきなり機体が急降下に入った

それも真っ直ぐに・・・

人の体のGに対する耐性は前後方向からかかるGに一番強く次に横方向からその次が上から、一番弱いのが下からのGである

そしてその下からのGをマイナスGという

ブラックアウトという言葉を知っている人はいると思うがマイナスGがその逆のレッドアウトというものがある

下からのGが大きいと頭に血が集まり目も充血して視界が赤く染まる現象だ

 

通常急降下するときにはバンクを取り(機体を傾け)機種を下に向けてから効果に入る

そうすれば殆どマイナスGになることは無い

その時教官はバンクも取らず、いきなりスティック(操縦稈)を前に押した

エレベーターでマイナスGを体験したことのある人も多いと思うがそれはコンマ以下の小さなものだ

 

いきなり体が浮き上がりショルダーハーネスに押し付けられた

どんなに足を伸ばしてもラダーペダル(方向舵と車輪を操作する)ち届かずスティックに何とか指が届く状態になった

何より恐ろしいのがマイナスGのあの感覚だ

エレベータで体験する何倍ものマイナスGを受けているのだ

ゾワゾワとするあの感覚と恐怖感は忘れられない

その間教官はずっと怒鳴っていたがそこは何も覚えていない

 

怖いけどそんな時に何を言われても頭には入りませんよ

教官殿