地上は苦手
フライトコースは初級操縦課程から始まる。
当時の初級操縦過程で使用していた機体はアメリカの練習機だったものを富士重工がライセンス生産したT-34(メンター)だった。
まだ軍用の航空機を日本で作ることのできない時代であったが、のちに国産のT-3を経て今ではこれも国産のT-7になっていることを思えば隔世の感がある。
訓練が始まると学生の最初の目標になるのはもちろんソロフライト(単独飛行)である。
決められた訓練時間(飛行時間)内にソロフライトを許される技量に達しなければそこでエリミネートとなる。
一度ふるい落とされると二度と戻ることは出来ずパイロットへの道は断たれてしまう。
そうなってしまえばそれまでの2年間は無駄になってしまう。ただの自衛官としてその後を人生を送るなんてお断りだ。
全員が同じスタートラインに立ち、はじめのうちは似たり寄ったりだが次第にそれぞれの得手不得手の科目がハッキリしてくるのだが、私の場合は大きな問題があった。
訓練は基地を飛び立って訓練空域まで行き色んな科目を行うのだがさほど問題はなかった。
ところが私の場合一度飛び上がって基地に帰ってくるまでは人並みにこなすのだが着陸になると教官が喚きだすくらいに下手くそだった。
更にタクシー(地上滑走)になると更に輪をかけて下手になる。
教官曰く、タクシーは整備員の方がよほど上手・・・だそうだ。
初級操縦過程で一番苦労したのはソロフライトに出るまでだったかもしれない