ついに初ソロ

同期が次々とソロフライトへと進んでいくうちに次第に不安が募って行った。

はじめのうちはランディング(着陸)が苦手なのは自覚していたのでそれほど焦りも無く、同じように取り残された同期と冗談交じりに「このままクビになったりしてな」なんて冗談も言う余裕はまだ残っていた。

初ソロの時には真っ赤な吹き流しを付けて飛ぶ。

地上から見上げる誰もが一目で初のソロフライトだと分かるようになっている。

 

その日の訓練内容は当日の朝に飛行指揮所のボードに書き込まれ、それぞれ確認することになる。

当然ソロが許されるかどうかはその時に分かるのだが、’今日も駄目だったか’という日が数日続いたときには残された同期と二人でフライトスーツに吹き流しを括り付けて走り回ったりしたものだ。

その時の写真は今でもあるが満面の笑みで走る私にはまだ余裕があったようだ。

 

そしてついに私以外の全員がソロフライトを行ったときには半分諦めかけていた。

次の日の朝、指揮所のボードに掛かれていたのはいつもと変わらない内容だったが訓練前の教官とのブリーフィングで訓練空域にはいかずに着陸訓練のにを行うことを告げられた。

 

離陸するとそのままトラフィックに入りひたすらタッチアンドゴーを繰り返す。

飛行機の操縦の中では緊急事態でない限り着陸が最も危険だと言われている。

当然一度のフライトの中で最も操縦に集中する時間帯である。

タッチアンドゴーを繰り返すという事は飛んでいる間ずっと最高に神経を集中していることになる。

最後のランディングを終えて駐機場に止まるとそのままシートにとどまるように教官から指示を受けた。