1番古い記憶

一番古い記憶は多分3歳か4歳の頃の出来事だと思う。2歳年上の姉がまだ幼稚園に入る前のことだ。

 

俺は姉と抱き合って恐怖と悲しみで泣いていた。姉も泣いていた。

 

場所は旅館の2階だったような気がする。2部屋繋ぎで奥の間で床母親が床の間を背にして此方向きに座り顔を抑えて泣いていた。

 

父親はこちらに背を向け母親に向かってうなだれている。その隣で父親と一番仲の良かった伯父が必死に何かを訴えている。

 

すると突然、母親が開け放たれた縁に突進すると木製の手すりを乗り越えて飛び降りようとするではないか。伯父が慌てて母を捕まえると何とか思いとどまるように説得しこちらを指さして

 

ほら子供たちもいることだし、うんぬん・・・

 

しばらくすると母は落ち着いたのかまた父親の前に座った。

 

俺の記憶はそこで終わっているのだが、ずっと覚えていたわけではない。

父親と母親は仲が良かったしごく普通の夫婦だった。ある突然この記憶が甦り、それ以来何度も思い出してはあれは何だったのかと考える。

とうとう最後まで両親に聞くことは無かったがそれでよかったのだろう。

 

一つ思うのは親は子供の前でけんかなどしてはいけないという事だ。