初めての居眠り

当時の第一航空団にはブルーインパルスもいた

今は松島の第四航空団でT-4を使って飛んでいるがその当時はまだF-86を使い浜松にいた

浜松までくると訓練時間(飛行時間)も多くなり教官も忙しいためにがくせいの訓練に対して教官が足りなくなることがあった

そんな時には稀にブルーインパルスの人が教官の代わりとして同乗することもあった

私も一度だけブルーインパルスの方に同乗してもたったことが有る

 

本来パイロットと言うものは操縦したがりである

人の操縦する飛行機に乗るなどまっぴらごめん、飛ぶのならば自分で操縦する方がいいと言うのが本音である

基本的には教官もそうなのだが学生の訓練なので何かなければ操縦かんを握ることは無い

しかしブルーインパルのパイロットはとりあえず教官の代わりに同乗しているのであるから気楽なものである

訓練中に怒鳴ることなどないしそれはそれは優しいものだ

 

私の場合もとても気楽な訓練になった

そして訓練空域からの帰りには「アイハブ」というと基地の近くまで同乗していたブルーインパルのパイロットは自分自分で操縦し始めた

することのない私はしばらく辺りを眺めていたがすっかり気が緩んでいたのだろう

睡魔に襲われた

 

なにせ軍用機といえども冷暖房は完備している、と言っても暑ければ外気を入れ寒ければエンジン付近の空気を入れるだけだが

その取り入れる空気は前席にあり前席の学生に合わせると後席にいる教官にはどうしても冷暖房が聞きにくくなり

必然、前席の学生にとっては冷暖房は過剰になる

その時は冬で暖房になっていたのだが、かなり暖房が効いている状態でぽかぽかとしている

通常の訓練では緊張の極致に入るためにそれほど暖かいの寒いのなど感じることは無いが同乗しているのは教官ではなく優しいブルーインパルスパイロット

ぽかぽかと温かいコックピットのなかで私はしばらく記憶をなくした

 

訓練中に居眠りしたのは後にも先にもこの時だけである