村上英士と源田実

それは村上英士が浜松基地司令時代に起きたことだ。

源田実は既に航空自衛隊を退官し国会議員へと転身していた

 

国会議員として活動する源田のもとに一つの陳情が舞い込んだ。

民間の航空ファンクラブの一つが浜松基地の飛行場を民間の自分たちにも使えるようにしてもらえないだろうかという事である。

 

これは不可能なことではない。自衛隊の飛行訓練は1時間ごとに区切られている。1時間おきに一斉に飛び立ち一斉にかえってくる

つまり時間をずらせばお互いの離着陸が重なることは無い

 

ただ常に時間帯をずらすことができるかというと、それは不可能だろう

空の上では何が起こるか分からない。いつ何時緊急事態が起きて着陸しなければ行けない事態が起きるかもしれない

 

訓練の中には離着陸の訓練の為場内周回路(トラフィック)を回りながらタッチアンドゴーを繰り返す場合もある

 

当時浜松の部隊(第1航空団)で使っていた機体はT-33である。民間で使うレシプロ機とは速度が違うため同じトラフィックを使う事は出来ない

下手をしたら民間機に追突なんて事態が起きないとも限らない

 

ただでさえ民間機を自衛隊の訓練基地に同居させて同時に運行させるなど面倒この上なく訓練にも支障が出ることも想定される。

トラフィックに関しても問題が出てくるのだが、それは自衛隊側にとっては大問題と言ってもいいほどのことだった。

 

そんなことを充分知り尽くしているはずの源田が民間にも飛行場を使えるようにするため乗り込んできたのである。